「RME 12Mic」製品レビュー:MADI/AVB接続可能なマイクプリ/ADコンバーター

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RME製のプロ仕様のマイクプリ&ADコンバーターです。めちゃくちゃかっこいい最高級マイクプリアンプです。

製品情報エフェクター/アウトボードRME

「RME 12Mic」製品レビュー:MADI/AVB接続可能なマイクプリ/ADコンバーター

 高音質であることと、高い信頼性により、世界中の音楽家からの圧倒的支持を得ているドイツのメーカー、RME。同社の12Micは、ハイエンドな12chマイクプリアンプです。RMEのマイクプリおよびオーディオI/O、MADIソリューションは、ステージ上でのマイクプリ設置を可能とし、リモート制御でセッティングの速度を大幅に向上させるのに不可欠なデバイスです。そのため、ヨーロッパをはじめクラシック録音の現場では標準になっています。

クロックは高精度なSteadyClock FSを採用

 12Micは最高24ビット/192kHz対応のADコンバーターであり、12chマイクプリでもあるモデルです。インターナル・クロックには、ジッター値を1,000兆分の1秒単位で抑制するSteadyClock FSを採用しています。また、MADIのマルチチャンネル・デジタル・オーディオ伝送規格に加え、AVBオーディオ・ネットワークにも対応。AVBネットワーク(IEEE 802.1AVB)に対応しているということは、12Micの大きな特徴ですね。

 AVBはレイヤー2(データ・リンク層)の規格。MACアドレスを用いて、ギガビット・スイッチを介する形で接続された機器同士の信号を処理します。AVBは遅延が許されないデータを優先的に転送するQoS(Quality of Service)のために、帯域予約などによって低遅延伝送と時刻の同期を実現するフォーマット。ちなみにDanteやAES67などはレイヤー4(トランスポート層)の規格です。

 12Micはこのようなマルチチャンネルで多機能なマイクプリにもかかわらず、1Uのコンパクトな筐体を実現しています。フロントに入力端子のすべてが並んでいるのは、非常に分かりやすいレイアウトです。リア・パネルにあるイーサーネットからのAVBやMADI入出力ポートからのMADI伝送およびADAT出力は、独立またはリダンダント接続が可能。また、複数チャンネルの音をまとめて送るマトリクス機能を利用して、低レイテンシーで信号をマージしたり変換することができます。

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リア・パネル。左からイーサーネット・リンク・ポートを2系統、USB Type-B端子、MADI入出力(SFP&同軸)、ワード・クロック入出力、AD AT出力×3系統を装備している

 本体右側のOLEDディスプレイおよびデータ・エンコーダーによって、ゲインの設定やファンタム電源切り替え、ルーティングなどのすべてのパラメーターに直感的にアクセスできます。ユニークなのはエンコーダーを2秒間押すと電源スイッチとして機能することです。

 マトリクス機能によって、すべてのアナログ入力とMADIのデジタル信号やAVBストリームをあらゆる出力にルーティングすることが可能。例えばディスプレイの左横にはヘッドフォン端子を装備しているので、そこに信号を送ってモニターすることができます。また、トラブル・シューティングの際に利用するような、ステージ上にモニター・ミックスを返すルーティングにも対応。こういった操作は12Mic本体から行えますし、コンピューターやタブレットのWebブラウザーからすべての機能を完全リモート制御することも可能です。ワンオペでも迅速なセッティングが実現できます。

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各種設定やレベルの監視はネットワーク経由でWebブラウザーから行うことができる

中低域のすみ分けが良く、情報量が多いサウンド

 気になる音色については、RMEマイクプリの従来機種Micstasyと比較してチェックしました。オーケストラ・ホール録音のメイン・マイクをスプリットしてMicstasyと12Micに入力し、DAWに録った音を比較試聴します。

 12Micの方がMicstasyよりもやや明るい音色という程度の印象。メイン・マイクのみをソロで比較した際には微妙な差異しか無く、Micstasyでも既に十分高音質であると感じました。ただ“確かにあるこのわずかな差異が一体何をもたらすか”について、メイン・マイク+スポット・マイクで試聴検証したところ、12Micの優位性が分かりました。12Micを使用すると中低域楽器のコントラバスとティンパニー、ホルン/チェロなど、音域が近い楽器がダンゴになりにくいため、ディテールをよく感じ取ることができます。比較したMicstasyの音像はスピーカーのやや下方低域を中心に落ち着いて広がるのに対して、12Micはリバーブ成分やマイクの位相差をよく感じ取ることが可能でした。つまり、それらによって情報量が多く感じられたのです。

 そして12Micの音は、アタック成分や高域にやや華やかさがあります。Micstasyと切り替えた瞬間に、音像の位置が約20cmくらい上がったような錯覚に陥りました。また、SteadyClock FSによる最少レベルのクロック・ジッターや良好なSN比の効果が、より豊かな音楽的情報をもたらすことがよく理解できたテストでした。

 ゲインやファンタム電源の制御などを、Webブラウザーから完全リモート制御することができたり、複雑な収録システムやセッティングを素早く行うことが可能な12Mic。ひずみや色付けの無い透明感のある音質を求められるクラシック音楽のホール録音にはもってこいです。ほかにも、さまざまなジャンルの音楽スタジオ収録やライブ配信などにおいて、12Micの高音質と高い利便性はほかのマイクプリでは得られないアドバンテージになるでしょう。

RME 12MIC マイク・プリアンプ

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